この職業はAI時代に大丈夫?(5) 弁理士

[chat face=”azatooth.jpg” name=”アザト君” align=”right” border=”gray” bg=”none” style=”maru”]なんか、士業は、みんな結構な業務量をAIに持っていかれるなあ。猛獣使いの修行みたいに、AIと戦う感じ。[/chat]

[chat face=”frogface.jpg” name=”カワダさん” align=”left” border=”blue” bg=”green” style=”maru”]そして、会計士とならんでAIとの、ある意味戦いを続けてきたのが、これから説明する弁理士だ。[/chat]

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弁理士は、特許や意匠、商標などの知的財産権(実用新案を含んで、4つの権利を産業財産権)を取得する企業、人の代理として、特許庁への手続きを行うのが主な仕事だ。

広範な領域での先進的な技術理解に加えて、法制度や各種公的手続への理解が求められる職業であり、理系と文系の両方の資質を兼ね備えることが求められる高度な職業である。

当然、資格試験として弁護士、会計士に並ぶ難関資格の一つであり、知的資産が企業戦略上、欠くことのできないものと位置づけられようになって、その重要性は増している。

一方、先行技術調査(知的財産権申請に際して類似性の高い申請が先行していないか?)や翻訳(海外での申請向けに日本語申請を翻訳する等)など、これまでの弁理士の稼ぎ頭だった業務で、AI導入が進展している。

特に、検索については、科学技術論文や特許申請は早い段階から電子化が進展しており、AIが本格化するはるか以前から、検索は弁理士の仕事を劇的に効率化してきた。AIの発展によって、これまで弁理士のノウハウとされていたデータベース検索(どのDBを、どのキーワード、どの時期で検索し、検索結果によって絞り込みや類似キーワードで並行検索を行う等)が、高精度に自動化される可能性が高まっていることによる。このままだと、顧客が直接検索すれば弁理士いらないんじゃないか?といった声が出てきた。

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[chat face=”azatooth.jpg” name=”アザト君” align=”right” border=”gray” bg=”none” style=”maru”]高度な技術、専門的な文書、知識の固まりほど、ある意味AIにとっては攻めやすいということか[/chat]

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弁理士の業務は、検索が重要な役割を果たす先行技術調査だけではない。特許明細書等の各種申請、海外申請にともなう翻訳など、いずれもAIとの親和性が高く、自動化がしやすいと言われている。その結果、AIによる職業代替の可能性が高い業種としてとりあげられることが多くなっている。

Oxford大学と野村総合研究所の研究でも、業務単位では90%を超えるという結果が示された。これに対して弁理士協会は、その数値を高すぎると反論している。

検索等のツール機能が強化されても、「抽象的な概念を整理・創出するための知識が要求される職業は、AIによる代替は難しい」としており、職種全体ではなく、業務の一部(最大でも40%程度)にとどまるという意見だ。やや乱暴に要約すると、「そんなに単純な仕事ではない」というのが多数派の見解となる。

特に、指摘されるのが「中間処理」問題である。中間処理とは、出願から審査途中に行われる審査官のダメ出しのようなもの、「すでに類似の技術は、○○の文献等で開示済ではないか?」といった指摘に対して、技術的に異なる、新規性があるといった解説、説明を行ったり、指摘を受け入れた上で、記述や範囲を見直して、先行文献・出願を回避するといったやりとりである。現時点では、審査官は人間であり、これに受け答えできるAIをあてるのは現実的とは言えない。

 

【人間に残された仕事は、将来、AIに置き換えられないか?】

特許出願、学術文書等の検索は、キーワード主体から自然言語、検索目的の優先度設定、連想される類似・近傍分野の探索など、様々なAI化が進んでいる。その結果にもとづく、申請書類作成も、ほぼ自動化できる目安は立ちつつある。

反面、特許申請に必要なものは、技術そのものの新規性だけでなく、これまで申請されてきた特許と内容が抵触しないこと、できるかぎり、後発の特許申請によって、技術の強みを浸食されないこと(類似特許の入る余地を少なくすること)など、同じ技術的な発明であっても、申請書の書き方によって、守られる範囲や独自性が変わってくる。その結果、後発や先発特許との審査係争における優位性が多く左右されてしまう。

上記の部分は、専門家としての経験、センス、ノウハウに依存するところが大きく、AIに学習させるためのデータとして、整理することも難しい。技術領域やテーマ別に、どう書けば、先行する特許との抵触を避けて、後発の特許申請の余地を排除できるか?ということを汎用的にすることは、書いた弁理士自身であっても容易ではない。

また、ソフトウェア特許、ビジネスモデル特許など、特許申請自身の潮流も、中期的には変化しており、当時は有効だった申請スタイルも、現在では時流にそぐわない、といった状況も時々発生している。

今後、国や言語を超えたデータベースの横断、一元的な検索、技術領域(通信、バイオ、医薬、材料等)別の探索や記述の癖に特化したAIの開発、導入が進むことが予想されるものの、上位の弁理士が日々、企業顧客等に提供しているアドバイザリーサービス、「この分野に、この内容で、今申請するのは厳しい」「この申請だと別の○○特許との抵触が大きいため、書き方を、このように変えるべき」「むしろ、こちらの視点で記述しなおした方が申請の通りが早そう」などはプロフェッショナルサービスとして、AIに置き換えること自体が困難そうだ。

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[chat face=”azatooth.jpg” name=”アザト君” align=”right” border=”gray” bg=”none” style=”maru”]弁護士や会計士の時と同じ感じかな。トップ階層の弁理士は大丈夫ってことなのか[/chat]

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【弁理士はAIと、どう向き合っていくのか?】

検索という観点では、弁理士は学者、法曹関係者と同様、ネットワーク経由でのデータベース検索自体が、サーチャーとして一つの職業を形作ることができるほど、重要な位置を占めていた。しかし、AIの進展は、キーワードや検索条件等に関するノウハウを、個人から、システムに移植させつつある。検索単体を主な業務としてしまうと、職能は維持できないと思われる。

反面、技術開発は、これまでなかった新たなテーマをとりあげるものであり、とうぜん、そこにはAIに学習させるデータは用意されていない。

したがって、知的財産が本来的な技術のフロンティア領域を開拓しつづけていれば、人間がなんらかの形で試行錯誤しつつ、対応する仕事としては残る。

むしろ、先端技術領域の評価や国境を超えた特許や申請の評価などはAIを活用して、劇的な生産性向上が予想される。弁護士やアーティスト同様、世界のスター、上位クラスはAIを活用した仕組みの上で、最先端を先導し、検索と定型文書作成主体の弁理士は、その位置づけを脅かされることになりそうである。

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次は、隠れた国際的で高度な専門職、アクチュアリー(保険数理士)だ。

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