この職業はAI時代に大丈夫?(7) 建築士
[chat face=”frogface.jpg” name=”カワダさん” align=”left” border=”blue” bg=”green” style=”maru”]士業も、だいぶ解説してきたように思えるが、実はまだまだ続く。次は理系職に転じて建築士だ[/chat]
[chat face=”azatooth.jpg” name=”アザト君” align=”right” border=”gray” bg=”none” style=”maru”]これまでの話からすると、図面は機械が引いて、コンセプト、構想、デザイン方針は人間ってとこかな?[/chat]
[chat face=”frogface.jpg” name=”カワダさん” align=”left” border=”blue” bg=”green” style=”maru”]それなりに話のつじつまは合っているね(笑)
建築士は、建築物の設計、工事監理、手続き業務を行う職業であり、日本においては建築士法にもとづき、国家資格として一級、二級などが定められている。
建築士の特徴の一つは、背景となる知識分野が専門職のなかでも、特に広範なことだ。意匠、構造、計画、材料、構法、歴史、環境など多様な分野に分かれているだけでなく、それぞれの分野が、構造設計のような理系的アプローチ、建築基準法や環境、歴史といった文系的な視点、美しさや完成度の高さといった人の感性に関わる視点なと、すべてを対象としている。
特定分野の機能、業務をAIが代替したといっても、職業自体がAIに脅かされる可能性は少ないと思える。しかしながら、当事者へのヒアリングを行うと、前近代的、必ずしも効率的とは言えない商慣習、業務や施主の意識等もあり、外からの代替リスクに脆弱なのでは?という声もあるんだ。
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建築士といって最初に思い浮かぶのは、設計図面であり、基本設計や実施・施工設計など、階層の相違はあっても、図面作成をAIが置き換えられるのか?が最初の疑問となる。
この業界では、1980年頃から、CAD(Computer Aided Design)が導入されることで手書きのプロセスを効率化する取り組みが続いてきた。その後、図面を効率的に入力し、出力を美しくするCADから、建築物を部品の集合体として、それぞれのデータの固まりとして構成、管理を行うBIM(Building Information Modelling)へと発展し、コンピュータ上での三次元の建物デジタルモデルに、コスト、備品、仕上げ、管理情報などを属性データとして、建築物のデータベース化と各種工程(建築の設計、施工から維持管理)への紐つけ、連携の方向に向かってきた。
現在、AI化のターゲットと目されるのは、CADオペレータ(操作、入力職)、実施図面作成、構造計算(実態としては入力、チェック、入力の繰り返し、実際に計算しているのはコンピュータ)、確認申請図書の作成等である。いずれも、特定の断面を切り出せば、コンピュータの得意領域であるが、たとえば確認申請そのものを、役所側がAIで確認するという段階ではないため、必要図面を自動で作成しても、問合せ対応は人間が行うスタイルとならざるを得ない。人の手を離れた自動化には、ほど遠いといわざるを得ない。[/chat]
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建築物に意匠、デザインは欠くことのできないものであるが、建築物の多くは必ずしも歴史遺産やユニークなデザインハウスばかりではない。ユニット形式のハウジングや、集合住宅、店舗併設の小規模住宅など、デザインのパターン、部品がほぼ固まっている建築物も、決して少なくない。むしろ、市場としてはそちらの存在感の方が大きいとも言える。
このような定型的な建築物に対応した建築業務については、大手ネットワーク事業者が、地理情報(立地から通行者、商圏等を評価)、建築設計から事業収支等を自動的に制作(設計そのものは、ほぼパターン化されており、出来てくる建築物はすべて同じと見てよい)、その上で確認申請書類等を作成する仕組みが、トライアルとして提供されたことがある。本格的な商用化には至らなかったが、定型的な業務の大胆な生産性向上の可能性として注目された。
そして、人間以外には困難と思われる意匠やデザイン工程も、歴史的な建築物のスタイルの模倣、設計図面への反映等は、高度なAIフィルターの一つとして実現可能と目されている。
ただし、誰もが見たことのない新規性を、AIに期待するという声は、研究部門等でも商用化のターゲットとはなっていない。商用化は儲かりそうな領域を狙うものであり、チェーン店、賃貸集合住宅、商業コンプレックスなど、特定パターンを踏襲した建築物を複数、設計・施工することがターゲットとなる。
【建築士はAIと、どう向き合っていくのか?】
1980年代にCADの普及が本格化した時、古参建築士は、「CADを使うとパース、規模感があいまいで、センスが磨かれなくなる」と主張し、その導入に抵抗していた。その後、手で描く図面は、生産性の高さ(特に再活用、修正対応等)からCADに代替され、現在に至っている。今では、構造設計ひとつとっても、自身で計算する建築士など見当たらず、必要なパラメータを入力しつつ、結果をみてトライアンドエラーで最適化していくアプローチとなった。建築士の仕事は、AI導入以前とは劇的に変化している。
AIは、自動化が部分的に進展していた工程(製図、申請書作成、構造計算等)を、より利便性の高い方向に前進させていき、定型的、もしくは均質性の高い複数の建築物に関しては、建築士の仕事を実質的に、パラメータ設定と出来上がりの確認にとどめるポテンシャルを持っている。
また、意匠面でも、既存の図面に、特定の建築スタイルに似せた設計追加・変更を自動で付加するなど、専門家以外からみると、一見、芸術的なデザインも可能であるかのように見せることも、実現可能な範囲に入りつつある。
ただし、多くの分野でAIが生産性を高める方向で提供されたとしても、オリジナリティを有する、そもそもの意匠、デザインを創造する人間の力は、AIに対しても決して見劣りするものではない。AIは使うもの、それによって、より意匠やデザインなど、人間にしかできない工程に、より時間とリソースをつぎこむことが求められる。[/chat]
次は、AI以前から情報化、ネットワーク化が進む図書館司書をとりあげる。